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「コロナ禍で自分の周りに彩りを求めたものがアートだったんです」―― アートコレクターnosuiさんの”好き”に囲まれた生活

アートを選び飾る楽しみをもっと身近にするアートプラットフォーム〈conte〉がお届けする連載コラム「お部屋でアートを楽しむ人々」。このコラムではお気に入りのアート作品を購入して、日常の暮らしの中でアートを楽しみ、彩りを持った生活を過ごしているアートライクな人たちのお話をお聞きしています。第2回目のゲストは建築関係のお仕事の傍らで、instagramでも様々なアーティスト情報を発信し続けるnosuiさんのアートライフを紹介します。

初めてのアート体験を教えてください

― nosuiさんはinstagram(@nosui)で、いろんな作家の方の作品情報を発信されてます。自分もフォローしていて、横田紗良さん、さめほしさん、akaさんなどの作品を知ることができました。nosuiさんがアートと触れた原点って何だったんですか?

nosuiさん(以下、nosui):自転車で行ける距離に東京都現代美術館があって、親がいろんな企画展に連れて行っていってくれたんです。忘れられないのが小学5年生の頃に開催されていた漫画作品の企画展(※「マンガの時代展 – 手塚治虫からエヴァンゲリオンまで – 」)でした。それまで雑誌で触れていた漫画が、額に入れられ展示されているという光景がセンセーショナルでした。幼いながらも親にねだって、その後も何度か連れてってもらいました。いまの僕はポップアートが好きなんですが、その原点は漫画にアートたる側面があるんだと感じたこの時が、初めてのアート体験だったと思います。

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― nosuiさんは情報を発信するだけでなく多くの作品を購入されています。アート作品を購入するようになったきっかけは何でしょうか?

nosui:大学生の頃、森美術館で開催されていたアンディ・ウォーホル展で購入した「キャンベルスープの缶」のポスターが初めてのアート購入体験でしたね。それかTumblrで様々なアートに触れていく中で、 KYNE(@route3boy)さんというモノクロで女性のポートレートを描く作家を知り、惹かれていきました。作品は購入できなかったんですが、ポスターやグッズ、服を買ったりするようになりました。いまの僕は女性のポートレート作品を中心にアートを楽しんでいますが、これもKYNEさんが大きなきっかけになっているのは間違いありません。

思い入れのあるアート作品

― nosuiさんは instagramでの情報発信だけでなく、コレクターとしても多くの作品を収集されています。どれぐらいの作品をお持ちなんですか?

nosui:アート作品の定義にもよるんですが原画で30点から40点、シルクスクリーン含めた作品であれば100点前後でしょうか。ステッカーやポスターなどの印刷物まで含めたら数えきれないコレクションがあります(笑)。飾れていない作品もたくさんあります。

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― すごい。nosuiコレクションとかできちゃいそうですね。

nosui:機会と場所さえあればやりたいですね。僕はコレクションしているだけですが、本来作品はいろんな人に見てもらった方がいいんです。たぶん作家の方も、それを望んでいるんじゃないかなと。実際に「見たい」という人もいるんですが、自分でも見てみたいですね、そういう空間を。ただ作品が好きすぎて売れないと思うので、見てもらうだけになると思いますが(笑)。

― たくさんあるコレクションから、nosuiさんの思い入れのある作品をお持ち頂きました。

nosui:どの作品も思い入れがあるので難しいのですが、まず僕が絵(原画)として初めて買ったのが紺野真弓(@konnomym)さんのこの作品です。女性を写実的かつリアルに描いていて、息を飲むような美しさを感じます。この作品を見た時はひと目惚れでしたね。僕にとって高額な値段だったんですが、思い切って購入しました。

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― かなり高額ですね。作品を購入する時は覚悟が必要だったのではないですか。

nosui:当たり前ですけど、展示が終わると作品はもう見れないじゃないですか。ただこの作品だけは家にずっとあって欲しいな、そばでずっと見ていたいなと思ったんです。あと、紺野さんの個展で実際に作品を描かれている様子を見る機会があったんです。限られた色の中で幅広く表現されていたのが印象的でした。その時に「次の機会があったら作品買います」と言ってしまったんです。そんな約束もしたので「絵を買う」というハードルを超えさせてくれたのかもしれないです(笑)。

― もう一点お持ち頂いた作品は、雰囲気が違いますね。

nosui:僕にとっての絶対的な作家を挙げるとしたら、この田中かえ(@kaechanha24)さんですね。彼女を知ったのは10年ぐらい前で、まだ彼女が美大生だった頃だと思います。その頃、僕はTumblrでアート情報を収集していたんですが、そこで知ったんです。その頃はまだそんなに田中さんの作品に対して熱量が高くはなかったんですが、ある時にソフビ(ソフトビニール人形)を発売するというので、なにげに応募してみたら抽選で当たってしまったんです。それが最初のきっかけでした。

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nosui:それからしばらくしてたまたま入ったBEAMSで田中さんの企画展がおこなわれていたんです。そこでリアルな作品に触れることができ、購入してしまいました。きっかけは偶然でしたが、その後は田中さんの作品を購入し続けています。いまでは絵だけでも20点近くあります。ソフビはほぼコンプリートしている気がします(笑)。

― すごい数ですね。nosuiさんが絶対的なアーティストと言われたのが理解できます。作家への向き合い方って音楽ファンがアーティストに向き合うのと近い感覚なんでしょうか。

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nosui:もちろん僕も音楽は大好きです。ただアーティストが好きというよりは、出力される音楽そのものに興味・関心を持つタイプだという気がしています。あくまでこの音楽に惹かれていて、アーティストが作る音楽すべてを好きでいるということではないのかなと。それで言うと、田中かえさんが出力する作品は たまたまずっとハマり続けてるんでしょうね(笑)。10年にもなると作家の描く表現も微妙に変化もしていきますが、それも許容できるぐらいに惹かれ続けてるんだと思います。

― 一人の作家をずっと見続けるってすごく羨ましい感じがします。自分もそんな作家さんを見つけたいです(笑)。

大好きなアートと過ごす日常

― 作品が身近にあることで生活に変化などありますか?

nosui:購入作品はそれまでにも数点はあったんですが、これだけの多くの作品を購入し始めたのは実はコロナがきっかけだったんです。仕事がリモートワークになって外出する時間が少なくなり、自分の周りに彩りを求めたものがアートだったんです。

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え?ということはこの2年ぐらいで作品数が一気に増えたんですか?

nosui:コロナによる生活環境の変化もありますが、前澤友作さんがサザビーズでバスキアの《Untitled》を落札した話題もあったじゃないですか。あのあたりからアート界隈は結構熱くなって、まだ無名だったり、若手の作家をクローズアップする機会がものすごく増えた感じがします。そんなこともアート作品を購入する機会が増えた要因かなと思います。

― いま、アート作品に囲まれた生活はどうですか?

nosui:コロナ禍の前までは気分を上げる方法って、僕はファッションだったり、服だったりしていたんです。でもその必要もなくなり、それがアートを飾るということに置き換わったんだと思います。好きなものに囲まれるって、やっぱり気持ちがアガります。

conteで出会った新しいアートの魅力

― nosuiさんには、初めてconteでプリント作品を体験してもらいました。選んだアーティストさんはアイリンさん。すぐに選ぶことができましたか?

nosui:conteに参加されている作家さんの作品はいろいろ見ました。僕が以前に行ったグループ展で見た作家さんもいて悩んだんですが、最終的には このアイリン(@cneelia)さんのプリントを選びました。僕の好きな作品が〈女性のポートレート〉なので、アイリンさんの作品には惹かれました。モチーフにしている夜景や、雑多な都市の風景が切り取られているのも好きです。

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※商品のバージョンアップにより、現行商品は作品サイズが大きくなり、余白が少なくなっています。

― 魚眼レンズで切り取っているような表現も印象に残りますね。

nosui:instagram的な表現アプローチも いまっぽさを感じます。ほかの作品も見たんですがとても興味深い作品が多いので、これからも追っていきたいですね。

― conteはアート作品をもっと手軽に楽しんでもらえたらという想いで生まれたサービスなんですが、実際に使われてみていかがでしたか。

nosui:作品の印刷が綺麗ですね。幅広いアーティストの作品があり、自分好みに出会えると思いました。

― これからconteに期待することってありますか?

nosui:これから色々なアーティストに広がっていく事が楽しみです。アートを手軽にと、アーティストの認知度が増えて価値が高まる事は同じ方向だと思うので期待しています。
若いアーティストが作品のプリント販売をしたい時にconteを利用したりしても面白いですね。

― ありがとうございます。それでは最後にアート作品を買ってみたいなと思っている人たちにメッセージをお願いします。

nosui:アートはハードルの高い趣味では無いです。好きな作品で気持ちが上がるなら本の表紙でもポスターでも良いと思います。自宅で過ごす事が増えたなら自宅を彩る事に踏み出すチャンスだと思いますね。

この記事で紹介された作品

懐かしくも新しさのある日常の風景を描く、AiLeeN/アイリン。
魚眼レンズを覗いたようなユニークな構図が目をひく。高くそびえ立つビル群と工事中のサイン。日々生き物のように変化する渋谷の街の今を切り取った作品。

AiLeeN/アイリンの作品一覧

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